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イメージでは「神経を切断するのだから、さぞ痛いだろう」 と思いますがじつは?
上図のように神経切断では、電流が流れないから神経端末の痛みやシビレ感はあり ません。
但し、切断場所が新たな発痛場所になる場合があります。
切断以遠は運動麻痺や知覚麻痺がおこります。
ただ、末梢神経切断では切断面に神経軸索の変性が生じ、末梢の神経軸索全体に変性がおよび、その細胞は場合により死滅します。再生が不能の場合には、外傷性神経腫、または切断神経腫が形成されます。
神経腫からの痛みは,
①再生線維の側芽からの自発放電の増加,
②機械的刺激に対する闘値の低下,
③交感神経線維の異常興奮,などが考えられます。
したがって、神経切断(主に抹消神経軸索)では単純に切断に対しての痛みではなく、切断後に起こる現象(生体の変化や神経軸索の変性や神経軸索の再生、それに伴うトラブルなど) での痛みが主体にまります。
このページはそのような趣旨で記載しています。
このほど、東京女子医科大学 医学部 生理学の宮田麻理子教授は、手足などにある末梢感覚神経が切断されると、きわめて早い時期に回路のニューロンがつなぎかえられ、機能局在も変化することを明らかにした。
日本では、交通事故などで手足を失う人が年間5000人に上るが、その多くが1週間以内に、失った手足がまだ存在するように感じ、激しい痛みを訴えるようになるという。
「幻肢痛」とよばれるこうした病態は、末梢神経が切断されたことで脳地図が変化したためにおきるとされてきたが、その詳細なメカニズムは不明のままだった。
マウス実験では、正常な視床のニューロンは、1本の内側毛帯線維からのみ入力を受けます。感覚神経を切断したマウスでは、切断後6日目というきわめて早い段階で、複数の新たな線維から入力を受けるようになり、視床の神経回路が大きく改編されたのです」と宮田教授。
このことは、損傷後すみやかに神経回路の配線がつなぎかえられることを示している。
さらに宮田教授は、新たに作られた内側毛帯線維がシナプスを形成して視床のニューロンとつながること、これらの新しいシナプスには、成長期のみにみられる特殊な神経伝達物質(GluA2)の受容体が発現し、あたかも成長期のシナプスのようにふるまうことも明らかにした。
一連の結果は、「神経が損傷しても、回路は簡単にはつなぎかえらず、何年も経た後に不可逆的なつなぎかえが生じる」との従来の仮説を根底から覆すものだった。
「損傷後のきわめて早い時期に回路のつなぎかえがおきることは、適切なリハビリを早期に始めることで幻肢痛を防いだり、治療したりができる可能性を示しています」。
「おそらく、正常な脳内でも、ある程度の回路のつなぎかえがおきていると思いますが、現状ではそれを観察する技術がないのです」とする宮田教授。研究がうまくいけば、打つ手のない幻肢痛の新たな治療法がみえてくるようになりそうです。
マウス実験で、視床のニューロン内側毛帯線維での実験結果ではあるが、人体の抹消感覚神経のおいても同じようなことが言えると思えます。
抹消神経は下図のような構造になっています。
共通認識として図示しましたので、参考にしてください
1)Ⅰ度損傷
一過性神経伝導障害、 軸索の断裂を伴わない一過性の伝導障害であり、原則として数日から数週間、通常12 週間以 内に完全回復します。肉眼的には正常なことが多 く、損傷部位では伝導障害があります。
2)Ⅱ度損傷 軸索断裂
軸索は断裂しているが、シュワン管および周膜の連続性は保たれています。 軸索はワーラー変性を きたし、チネル 徴候が出現するが、内膜は損傷されていないため再生軸索は元の効果器に到達します。1 週後より0.5 ~ 2mm/日の速度でチネル 徴 候が遠位に進行すれば順調な再生と考えられます。
3)神経断裂、
軸索、神経上膜が断裂し肉眼的に連続性が無いか、あっても瘢痕により軸索の連続性が失われています。 自然回復は期待できず神経縫合術手術しても、ある程度の神経過誤支配 は 不可避なようです。
4)Ⅳ度損傷
神経上膜は断裂せず神経は有連続性であるが、 神経周膜が断裂し神経断端間には瘢痕組織が介在 しているため自然回復は期待できない。神経縫合 を行っても機能回復は不完全な場合が多い。
5)Ⅴ度損傷
神経断裂と同じ、神経上膜が 断裂し、神経の連続性が断たれた状態であり、IV度損傷と同様に自然回復は期待できません。 神経移植が必要になる場合があります。
6)Ⅵ度損傷
I ~Ⅴ度損傷の神経束が混在した状態です。
チネル徴候:
神経線維再生の過程において、まだ髄鞘に被覆されない軸索の先端部は機械的刺激に対して過敏になる。 四肢の表在近くに触れる神経幹内に再生が始まると、皮膚表面を軽く打っても放散性の非常に激しい痛みが発生する
1)圧迫、 泥酔して腕枕をすることにより生じるトラブルやベンチの角で橈骨神経が圧迫されて生じるトラブルなどはⅠ度損傷が多 いが、睡眠薬中毒、一酸化炭素中毒などではⅡ度 損傷も生じます。
2)皮下骨折・打撲、 原則として有連続性損傷でⅡ、Ⅲ度が多いが、 Ⅲ度以上の損傷もあります 。
ベルトコンベアに上肢を巻き込まれた場合やバイク事故による腕神経叢損傷ではⅢ度以上の神経損傷が多く、神経損傷は一カ所に限局せず広い範囲で損傷される。バイク事故による腕神経叢損傷では腕神経叢に牽引力が働き神経根引き抜き損傷も多いです。
抗癌剤・抗生剤、ピリン系薬剤の点滴漏れでは化学的に小径線維が主に障害されます。 なお造影コ ンピューター断層撮影(CT)や造影磁気共鳴画 像(MRI)撮影時の造影剤(CT では非イオン性 ヨード造影剤、MRIではガドニウム製剤)漏れで は物理的な圧迫により神経障害が生じます。
乳癌に対する放射線照射後に照射部位に一致した高度な瘢痕を生じ遅発性神経麻痺をきたすことがある。チネル 徴候が少ないことが特徴である。 病態として神経の放射線障害と遅発性に生じた周 囲の瘢痕組織による圧迫がある。末梢神経の耐容線量は15 ~ 20Gy(1グレイ = 100ラド)であり、近年行われるように なったカテーテルアブレーション(カテーテルで不整脈を起こす原因となっている異常な電気興奮の発生箇所を焼き切る治療法)では照射線量が 多く、腕神経叢障害を生じる可能性があります。
軸索が断裂すると断裂部位より遠位の軸索は変性(ワーラー変性)し、近位の軸索断端から発芽した再生軸索が遠位に再生します。軸索の再生速度は、1 ~ 2mm毎日であることから、腕神経叢損傷や坐骨神経損傷などでは軸索再生に1年以上かか ることになります。
ワーラー変性は断裂した細胞突起 (軸索)の変性であり不可避です。 免疫抑制剤による軸索再生速度の 亢進が報告されているが、副作用の問題で臨床には使用されていないようです。 電気刺激など、様々 な 手段 による軸索再生亢進も報告され ています。
再生運動神経軸索が感覚神経シュワン 管に、 再生感覚神経が運動神経シュワン管に再生した場合は機能回復が見られない。
また、上位型分娩麻痺に見られる三角筋と上腕二頭筋の同時収縮 (トランペットサイン)などは、再生運動神経軸索が本来と異なる筋に再生したためにおこる運動神経同士の神経過誤支配です。
また、正中神経 損傷で神経修復後に親指を触っても中指の感じが すると訴えるのは感覚神経同士の神経過誤支配です。
再生神経軸索を元のシュワン 管に再生さ せる物質は見つかっておらず、術中に運動神経束と感覚神経束を同定し、運動神経束同士、感覚神経束同士を縫合することが現時点で可能な対策で あるようです。
神経断裂により筋は2 ~ 3 カ月で50%(湿重 量)、1年後に20~30%に萎縮(脱神経性筋萎縮)し非可逆的となります。
電気刺激やストレッチ等では筋萎縮の進行をある程度軽減できるが、防止まではできず、実験的には脊髄後根移植、感覚神経縫合による脱神経性筋萎縮の軽減効果が報告されています。
現時点では脱神経性筋萎縮を防止する手段はなく、早期の神経縫合と神経再支配までの筋電気刺激が最良 と考えられます。
神経断裂より1 年以上経過した例 や神経縫合を行っても筋の回復が期待できない例 では腱移行術が行われます。 腕神経叢損傷の神経根引き抜き損傷や高位神経損傷では神経移行術、または腱移行術が選択されます。
脱髄とは:
有髄神経の周りにはシュワン細胞と呼ばれる髄鞘が取り巻いています。この髄鞘があるために有髄神経では跳躍伝導を行うことができますが、この髄鞘が障害を起こして機能を失った状態のことです。
・脱髄の影響が抑制性に変化した場合は伝導の遅延、上揃い、ブロックなどが生じます。
・脱髄の影響が興奮性に変化した場合は自発発射、脱髄部のNa+チャネルや機械刺激受容タンパク質の増加、エファプスなどが考えられます。
神経線維が興奮するとき、電位依存性Na+チャネルが開いて起動電位が発生します。 続いて、Na+チャネルはすぐ活性化されて閉じてしまい、脱分極(マイナス電位)しますが、同時にK⁺チャネルが開いてまた、再分極(プラス電位)します。
有髄線維膜のイオンチャネル分布密度は均一です。
電位依存性Na+チャネルの密度はランヴィエ絞輪の部分で約1,500/μm2ですが、髄鞘に覆われた部分では、25/μm2以下です。
① 軸索の連続性は保たれるが、髄鞘だけが髄節単位でランダムに変性・消失する病変のことです。
② 軸索の機能は保たれても、髄鞘部での興奮伝導は遅延または停止するため、伝導時間の遅延、時間的分散の増大、伝導ブロックなどが生じます。このため、NCV(神経伝導速度)の遅延、振幅低下などが起きます
③ 神経線維が脱落すると、髄鞘による絶縁が取れて、無髄になります。 隣接する健常のランヴィエ絞輪が興奮したとき、脱髄した神経線維の広い範囲から電流(マイナス電荷)が流入します。 そのため脱髄部の脱分極がマイナス側(分極側)に振れ、活動電位発射閾値に達しないことが考えられます(インピーダンスミスマッチ)。また脱髄部はNa+チャネル密度が低いので脱髄部を伝わる興奮伝導を維持できないことが考えられます。
1)興奮伝導を中断した脱髄部位もやがて興奮を伝導するようになる。
軸索が細くなって、インピーダンスミスマッチが改善され、興奮を伝導しやすくなる。
2)ランビエ絞輪にあったNa+チャネルが脱髄部に分散する。
3)細胞体で合成されたNa+チャネルが脱髄部の軸索膜に組み込まれ、脱髄部のNa+チャネルの密度が高まる。
4)脱髄部を通るとき伝導に遅れがでる。
5)高頻度のインパルス列の伝導が損なわれる。(視神経では、視覚像が消える。)
6)脱髄部における興奮の発生が遅れると、すでに興奮した絞輪部が不応期を脱し、興奮が逆向きに伝導する。
7)脱髄部にNa+チャネルが出現し、自発的に興奮する。 これが異常感覚を生じる。
8)機械刺激受容タンパク質が脱髄した軸索に取り込まれ、脱髄部が機械刺激に反応するようになる。
9)脱髄部の絶縁が悪くなって異なる神経線維でのインパルスの交感、すなわちエファプス伝達が行われる。
10)正常な軸索なら単一スパイク電位を発射させる刺激に対しても、複数のスパイク電位を発射するようになる。
11)これらの変化がAδ侵害受容線維で起こると痛みが生じる。(C線維神経はもともと髄鞘がありません。したがって、脱髄の概念もありません)
④時間的分散の増大 時間的分散
運動神経伝導速度検査では末梢神経には線維直径の異なる多数の神経線維が含まれています。したがって太い線維と細い線維とでは伝導速度に差があります。このような伝導時間のばらつきを時間的分散といいます。
通常は時間的分散はほとんど目立たずマスクされるが伝導遅延をきたす節性脱髄、再生神経線維や再生髄鞘を伴う病的状態では増大し、顕著になる。
⑤伝導ブロック
神経線維の損傷部位を超えて、インパルスは伝導しないが、損傷部位以後の伝導は障害されていない状態をいいます。
再生神経線維から出る側芽の先端に膨んだ成長円錐があります。成長円錐には、Ca2+チャネルや電位感受性Na+チャネルが蓄積しています。 Ca2+チャネルは異常興奮に直接関与しないが、Na+チャネルの蓄積が自発放電の原因になります。
末梢神経が切断されると、Na+チャネルが断端に送られます。余分ができると、側芽や成長円錐の細胞膜に取り込まれるので、その結果、Na+チャネル密度が高まり自発性興奮を起こすことになります。
側芽の細胞膜に機械刺激受容体タンパク質が組み込まれています。機械的に刺激されると、このタンパク質の孔が開いて、Na+を通すようになります。そして電位依存性Na+チャネルが開き、活性電位が発生します。
末梢神経切断後のアポトーシスによる逆行性細胞死が起こりうるが、その程度は軽度のようです。この場合に死滅するのは無髄のC線維を出す小型ニューロンの一部です。 ところが死滅しなかったニューロンにも多様な変化が起こり、切断された軸索を再生する準備に入ります。
軸索を切断されたニューロンの細胞核では、切断前に興奮伝達を支えていた遺伝子の発現が抑えられ、再生を支える遺伝子が発現します。
NGF(神経成長因子)は再生の必要がなくなったことを細胞体に知らせ、再生型の遺伝子発現を伝達型の遺伝子発現に切り替えさせると考えられています。
末梢神経を切断すると、後根神経節ニューロンとそれから出る神経線維のNaチャネルが増えます。
これらの変化が、末梢神経搊傷後に侵害受容線維経から起こる自発発射と高頻度発射に寄与すると考えられます。例えば、Naチャネルが増えるため、自発発射が起こりやすくなるのです。
ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、急性間欠性ポルフィリン症、遣伝性運動感覚性ニューロパチー、および鉛中毒があります。
運動神経に障害があると筋力低下や筋肉の萎縮が発生して、物を取り落としたり歩きづらくなったりします。
ギラン・バレー症候群:
急速に発症する左右対称性の四肢筋力の低下と腱反射の消失を主徴とする病気です。人口10万人あたり年間1~2人の発症数であり、年齢別にみると若年成人と高齢者に発症のピークがあります。
感冒症状や下痢のあと1~3週間して比較的急速に四肢の筋力低下が現れますが、通常は2~4週間目でピークに達し、進行は停止します。進行停止後は徐々に快方に向かい、3~6カ月でほぼ完全に治ります
急性間欠性ポルフィリン症:
ふだんは症状がなく、栄養不良、ステロイドやバルビツール酸系薬剤の摂取、ストレスなどを契機に発症する。腹痛・不整脈・ヒステリー様発作・不眠症・四肢のしびれなどの症状が見られる。ヘム合成酵素の欠損によりポルフィリンの前駆体が体内に蓄積することによって発症する。ポルフィリンは蓄積されないため、光線過敏症は発症しない。
糖尿病、尿毒症、アミロイドーシス、アルコールおよび中毒(薬物・有機溶剤・重金属など)があり、とくに、大型の脊髄後根神経節神経細胞が選択的に障害されるため、著明な深部感覚障害・感覚性失調をきたすものに、癌性ニューロパチー、シェーグレン症候群および特発性失調性ニューロパチーがあります。
感覚神経に障害が起きるとしびれや痛みが起こったり、痛み・熱さ・冷たさなどの感覚が鈍くなる感覚障害が発生することが特徴です。手足の一間隔をつかさどる深部感覚に障害が出るとボディバランスが崩れたりもします。
アミロイドーシス:
「アミロイド」と呼ばれる蛋白が全身の臓器の細胞外に沈着する疾患。日本では特定疾患(難病)に指定されている。
シェーグレン症候群:
涙腺の涙分泌や、唾液腺の唾液分泌などが障害される自己免疫疾患の一種。40~60歳の中年女性に好発し、男女比は1対14である。
運動神経
運動神経に障害があると筋力低下や筋肉の萎縮が発生して、物を取り落としたり歩きづらくなったりします。
感覚神経
感覚神経に障害が起きるとしびれや痛みが起こったり、痛み・熱さ・冷たさなどの感覚が鈍くなる感覚障害が発生することが特徴です。手足の一間隔をつかさどる深部感覚に障害が出るとボディバランスが崩れたりもします。
自律神経
自律神経障害ではおもに立ちくらみや排尿障害・発汗異常、下痢や便秘などが症状として見られます。
運動・感覚・自律神経のうち、障害は運動優位や感覚優位というように偏って発生する特徴があります。
全身の末梢神経が障害される「多発性末梢神経障害(多発神経炎)」と一つの神経だけに障害が起きる「単末梢神経障害(単神経炎)」とに分類されます。多発性で両手足のしびれが多く、単末梢神経の場合は片側の手足にしびれや痛みが発生します。
おもに立ちくらみや排尿障害・発汗異常、下痢や便秘などが症状として見られます。
*神経線維の再生
再生軸索は受傷後3~4週で発芽し始めるが、再生軸索が伸び始め、損傷または縫合部を通過するまでの期間には初期の遅れ、再生軸索が終末部に達してから筋収縮を開始するまでの期間には終末あるいは最後の遅れが存在する。最初と最後の遅れを合わせて1~32 週、平均で13週、縫合で16週としている。
以上の遅れを考慮したうえで再生軸索の伸びる早さは、だいたい1日に1~3mmであるが、末梢では少し遅くなる。臨床的には1日に1mm程度で計算して大まかな回復時期を予測することができる。
*Tinel徴候
損傷された末梢神経の走行に沿って末梢から中枢に向かって指尖で叩くとき、末梢に向かって放散痛が起こることをいう。この点をTinel陽性点といい知覚神経線維の最先端が未成熟で刺激に敏感に反応するためと考えられている。時間の経過とともにTinel陽性点が末梢に移動してくれば、軸索の回復が示唆される。軸索損傷の無いNeurapraxia(一過性神経伝導障害)ではこの徴候は出現しない。
末梢神経障害は様々な原因から発症します。もっとも多いのは糖尿病によるもので、他にはビタミンB欠乏や尿毒症などの代謝障害や膠原病・アルコールの過剰摂取などが挙げられます。
代謝異常によるものを代謝性末梢神経障害と呼びますが、他にも中毒性や特発性末梢神経障害と呼ばれるものもあります。このように診断名が原因によって変わるのが末梢神経障害(ニューロパチー)なのです。
1本の神経に起こる単神経炎で手や腕では正中神経・尺骨神経・橈骨神経に、下肢では腓骨神経に発生する場合があります。
圧迫されることが原因で発生し、機械的もしくは絞扼性神経障害と呼ばれていますが、末梢神経幹を圧迫しただけで一々「痛み症状」が起こったのでは、スポーツも格闘技も成り立たないし、日常生活にも支障が起こります。
ましてやマッサージや整体療法は治すよりも傷める手法になりかねないです。
(原則神経圧迫では痛みは生じません)
末梢神経の周膜と上膜にも侵害受容器が存在することが明らかになってきたが、非常に閾値が高いようで、よほどの刺激でなければ作動しない。
代謝異常に由来する多発神経炎で、身体の末端ほど強い症状が出るものです。特に糖尿病では病状のコントロールがうまくいかないことで発生することが多くなります。
糖尿病が原因の場合は自律神経障害・栄養障害・循環障害が重なるためさらに進行する恐れが高くなります。尿毒症では貯留した老廃物中の物質が障害となり、ビタミンB欠乏では貧血を併発します。甲状腺機能低下症も原因の一つに数えられます。
風邪やその諸症状が治ってから10日後あたりに急に手足がしびれたりするのが感染後性の末梢神経障害です。風邪様症状が治まっても末梢神経にはまだ風邪などの病原体成分が残っているため、免疫がその神経を攻撃することで起こります。
代表的なものにギラン・バレー症候群があり、症状がゆっくりと悪化していく慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーという疾患もあります。
ギラン・バレー症候群:
感染後性ニューロパチーの中でも難病に分類される疾患です。原因は病原体などの感染症やワクチン接種が主なものですが、風邪や胃腸炎などのような症状のあと1週間から3週間程度で下肢の筋力低下が比較的急に現れます。運動神経の障害が主ですが、感覚神経障害が出ることもあり重症化すると呼吸困難に陥ることもある末梢神経障害です。
アレルギー疾患が原因となるのが血管炎性です。全身性エリテマトーデスやアレルギー性血管炎・結節性動脈周囲炎などがおもな原因疾患となります。末梢神経に影響する血管が炎症を起こすもので、様々なところに単神経炎が発生しますが長期化すると全身性の多発神経炎の症状が発生します。
重金属や薬剤などの中毒性の末梢神経障害は公害病が含まれます。水俣病は水銀中毒が原因で、手袋や靴下をはく部分に障害が顕著に現れます。鉛中毒や殺鼠剤に含まれるヒ素でも多発神経炎が見られます。
結核治療薬ではビタミンB6が欠乏することによる多発神経炎、ビンクリスチンなどの抗がん剤では感覚神経に偏った多発神経炎が発生することがあります。
有機溶媒であるシンナー吸入やボンド(接着剤)を多用する職業でも末梢神経障害を誘発します。アルコール依存症や急性アルコール中毒でも感覚神経に障害が発生します。
遺伝子変異が原因として関与する遺伝性ニューロパチーは根本的な治療法が現在のところないのが実情です。
代表的なものにシャルコー・マリー・トゥース病と家族性アミロイド・ポリニューローパチーという疾患があります。末梢神経の編成や自律神経障害が極めてゆっくり進行していくのが特徴です。
シャルコー・マリー・トゥース病:
下腿と足の筋萎縮と感覚障害を特徴とし、進行すると上肢や手にも障害を生じる、神経原性筋萎縮である。遺伝性運動性感覚性ニューロパチー、腓骨筋萎縮症とも呼ばれる。遺伝性ニューロパチーの代表疾患である。
家族性アミロイド・ポリニューローパチー:
種々の血清蛋白質の変化によって、全身にアミロイド(異常な繊維状の蛋白質)が蓄積するアミロイドーシスという病気のなかで、神経障害を主な症状にするものをいいます。
末梢神経障害の治療はまず原因を特定することから始まります。診断された障害に対する原因療法や対対症療法が有力な治療法で、現状よりも障害が進まないようにすることが目的となります。
また、急性末梢神経障害では後遺症を軽減するためにも早期診断と早期治療が重要です。
末梢神経障害でも痛みを伴うものを有痛性神経障害と呼びます。末梢神経が障害を受けると電気信号が感覚神経を伝わり大脳皮質へ達します。そこで初めて痛みやしびれという感覚が生じます。
痛みを止める方法として薬物療法があります。神経の損傷による痛みなので、通常の鎮痛剤ではない薬物を投与します。
また、電気刺激療法などが効果を発揮します。
抗うつ剤のアミトリプチンや抗けいれん薬の内服、麻酔薬リドカインを外用で投与します。痛みが軽快して来たら理学療法・リハビリを開始して筋肉拘縮の予防と回復を目指します。
まずは既に患っている疾患の改善が先決です。甲状腺機能低下症であればホルモン投与や免疫疾患では血漿交換療法や免疫抑制剤など、既に行われている治療がカギとなります。
糖尿病では高血糖が続くと神経細胞にソルビトールという物質が蓄積されることで神経が障害されます。血糖値コントロールにより進行を遅らせたり軽減させる可能性もあります。
ガンなどの悪性腫瘍が原因の場合は抗がん剤も治療の範囲に入りますが、抗がん剤が末梢神経障害の原因になることもあります。このため悪性腫瘍の切除も末梢神経障害治療の視野に入ることになります。
(神経腫の形成を除く)
下図の上図のように神経絞扼(圧迫)状態でも、活動電位電流が流れないなら痛みやシビレ感はありません。
しかし、運動麻痺や知覚麻痺がおこります。
左図の下図のような場合で活動電位電流が流れるなら、痛みやシビレ感はなく、運動麻痺や知覚麻痺も生じません。
従来神経の圧迫が原因と考えられた痛みやシビレ感は神経の圧迫でなく血管の圧迫で、血行不良によるものと考えられます。
血行不足→ 酸素不足→ 発痛物質生成→ 痛み信号発生→ 脳に伝播となります。
ただ末梢神経切断では切断面に神経軸索の変性が生じ、末梢の神経軸索全体に変性がおよび、その細胞は場合により死滅します。
再生が不能の場合には、外傷性神経腫、または切断神経腫が形成されます。
神経腫からの痛みは,
①再生線維の側芽からの自発放電の増加,
②機械的刺激に対する闘値の低下,
③交感神経線維の異常興奮,などが考えられる。
従来言われたような単なる神経圧迫では活動電位は発生しないのです。(痛みは発生しない)
末梢神経が障害を受けてしばらくたつと以下の要素により再生が始まります。
•神経が切れた端の中枢側から新しい神経の枝が伸びます(これを発芽or側芽と呼ぶ)。
•また、神経を取り巻いているミエリン鞘は活発に分裂・増殖し、元にあった神経上に沿って一列に並び管を形成します。
• そして発芽した神経が管の中を通り、末梢方向へ神経が再生していくのです。
神経損傷の中枢端と末梢端が大きく離れていたり、結合組織性の瘢痕(はんこん)がその間に出来たりすると、神経が正常に伸びることができず、増殖したシュワン細胞や結合組織と側芽が一緒になって神経線維の集まりが形成されてしまいます(これを神経腫と呼ぶ)。
神経腫はしばしば機械刺激に敏感で、軽い圧刺激や手足の運動が引き金となって、障害された神経が以前支配していた領域に放散する痛みを引き起こします。
基本的に は下記のとおりです。
Ⓐ 神経抹消の受容体と (侵害受容体そのもので当然です)
Ⓑ DRG(後根神経節)および (末梢神経の細胞体部分です。当然軸索丘があり、発火するのは当たり前です。)
© 脊髄後角の受容体のみが発信源となる。(シナプスを形成している神経末端です。伝達物質や発痛物質に反応します)
Ⓓ髄鞘の有る感覚神経(Aδ神経)の場合は髄鞘が破壊され、無髄状態になった場合には神経どうしのクロストーク(混線)や電位依存性のイオンチャネルTRPV1の出現で、痛みなどを惹起します。C神経の場合はもともと髄鞘がありませんから、これらの可能性はあります。
それ以外の神経の部分には痛み信号を発生させる受容体がないのです。(神経の損傷や髄鞘の損傷などが無ければ)
侵害受容器は神経末端にあって、神経線維途中にはないという意味です。ただ、髄鞘のない部位には侵害受容器はなくても、電位依存性のイオンチャネルTRPV1は出現します。したがって、炎症物質などがあれば、反応することになります。
異所性発火という原理がないとは言わないが、あっても多くないと思われます。(異所性発火とは神経線維途中という意味ではないのです) 脱髄の場合は上述の理由で、可能性がありと思います。
神経損傷の中枢端と末梢端が大きく離れていたり、結合組織性の瘢痕(はんこん)がその間に出来たりすると、神経が正常に伸びることができず、増殖したシュワン細胞や結合組織と側芽が一緒になって神経線維の集まりが形成されてしまいます(これを神経腫と呼ぶ)。
神経腫はしばしば機械刺激に敏感で、軽い圧刺激や手足の運動が引き金となって、障害された神経が以前支配していた領域に放散する痛みを引き起こします。
その場合は典型的な痛みではなく、しびれや鈍い重さというような形容しがたい体性感覚を受けます。
圧迫されて損傷を受けるのは直径の太い神経線維であり、運動覚(Aα神経)や触覚(Aβ神経)です。
痛覚の神経線維は圧迫に強く損傷を受けにくいのです。(細い神経であるAδ神経とC神経)
これらは圧迫による阻血、脱髄による異所性発火、などがあります (ただしそれらは典型的な痛みではない)。